外資系戦略コンサルティングファームをはじめとする人気企業の選考で出題され、また社会人の基礎的な思考能力訓練としても用いられるフェルミ推定。本記事では、Reverse会員限定で開講していたフェルミ推定の講座を元に、フェルミ推定の概要から評価ポイント、そして例題を用いて解法を図解で分かりやすく解説いたします。
この記事を読めば、フェルミ推定の基礎を無料で完全にマスターできます!
早速始めていきましょう!
目次
はじめに
いきなりですが
「ファミレスチェーンの市場規模を求めてください」
是非5分間程度で考えてみてください!
本企画はこの問題を題材として、実際にどう解くかを解説しながら進みます。
最初は難しいかもしれませんが、自分なりに考えてみましょう。
フェルミ推定とは?
フェルミ推定とは、当たり前ではない数値を、自身の仮説をもとに論理的に推測することです。
単に1兆円、2兆円などと予測するのではなく、論理的に構造を作り、より精度高く推定する手法です。
今であれば、市場規模はネットを使えばすぐに出てきますが、例えば
・非上場企業の売り上げ
・日本に存在する電柱の数
などは直ぐには出てこないかと思います。
こういった値を論理的に分解して推測する思考力は、ビジネスパーソンとして課題を分解しその要因を突き止め解決する力にも直結しますし、数字にも強くなります。
ですから戦略コンサルティングファームを目指す人に限らず、どのビジネスパーソンにも必須の思考力となります。
フェルミ推定ではどういう力が求められるのか?
ではより詳細には、フェルミ推定にはどういった能力が求められるのでしょうか?
フェルミ推定に求められる能力は、大きくは次の4つです。
仮説思考力
これは「予め自分なりの予測を立てて物事を思考する力」です。
これと対照的なのが、手当たり次第全てのことを検討しようとする事です。物事の全ての可能性を考えて、それら全てを考慮する、というのは確かにいつかは考えるべき事にたどり着きます。しかし、思考時間は有限ですし、日々の働いている時間も制限があります。その制限の中で結果を出すには、自分なりの仮説を立てて考えた方が良いことから優先的に取り組む必要があります。フェルミ推定でもこの能力は必要で、
「どのように式分解したら良いのか?」
「分解した式の値を代入するにあたり、どのようなロジックをつけるのか?」
といったところでは必ず仮説思考が必要となります。
仮説思考は生まれ持ったセンスもありますが、練習を積み重ねることで鍛えることができます。
構造化能力
これは、「一つの事象をより細かい複数の事象に構造的に分解する力」です。
それ単体では考えにくいような事象も、複数の細かい要素に分解することで考えやすくなります。例えばスタバ1店舗の売り上げをフェルミ推定したいという場合でも、単に1店舗の売り上げを予想するのではなく、例えば
「席数 × 稼働率 × 回転率 × 営業時間 × 客単価」
というように、値を推測しやすい要素に分解することで、最終的に推定したい1店舗の売り上げをより精緻に予想することができます。
この際にポイントとなるのが、MECE(漏れなくかつダブりなく)に分解するということです。
構造化においてモレやダブりがある事は致命的です。MECEに構造化できていないと、値を推測するにあたり、抜け漏れや重複してカウントしてしまうことになってしまいます。必ずMECEに構造化する事を心がけましょう。
ビジネスリアリティ
ビジネスリアリティは非常に定義の広い言葉ですが、簡単に言うなら
「ビジネスの世界で妥当かどうか」
という事です。特に新卒の学生は社会人経験がないために、ここが欠けている場合が多々あります。また社会人の方でも、経験したことの無い業界については難しい場合があります。
式分解した各要素の値を推測する際などに、ビジネスリアリティが必要となってきます。
これは1日で身につくようなものではない為、日頃から情報収拾などを欠かさないことが大切です。コンサルティングファームでは様々な業界の課題に取り組むため、多くの業界についてのビジネスリアリティも育てておく必要があります。
業界地図などは、多くの業界のトレンドやシェア構造などを端的に書いており、体系的なインプットに最適なので是非利用してみてください。
お勧め書籍:「会社四季報」業界地図 2022年版
計算能力
最後に計算能力です。フェルミ推定での思考時間は長くても5分程度が目安です。そのために四則演算を正確かつスピーディーに行う必要があります。一方で、フェルミ推定の目標は桁を合わせる程度なので、適度な工夫を行うことでより計算速度を上げることができます。このあたりの方法は本記事の後半でご紹介します!
フェルミ推定の問題の種類
フェルミ推定には様々な問題があります。そしてその系統ごとにおおよその式分解は共通するものとなるので、その種類分けを分かっておくと式分解を間違えにくくなります!
フェルミ推定の中でも基礎的な問題の系統は以下の図のようになっています。
大きく二分すると売り上げ推定系と個数推定系に分けられ、さらにそれぞれ二つの種類があります。それぞれの種類ごとに、筋の良い式分解が存在します。
フェルミ推定の解き方の全体像
ここからいよいよ解法の説明をしていきます!
推測したい値を、ただ当てずっぽうに考えても意味がありません。
仮説に基づいて論理的に行うことで、より妥当性が上がります。そして、その思考法は一定のやり方があります。本記事ではそのやり方を詳しく説明していきます!
フェルミ推定の解法ステップは大きく分けると以下の5つになります。
あくまでこれは一つのやり方です。思考時間や、デスクトップリサーチなども行うとなればまた別のやり方が考えられますが、このフローが基礎的なものです。
一般的なフェルミ推定では、これをおよそ4分間程度で出来るようになることが目標です。
以降ではこのステップ一つ一つを丁寧に解説していきます!
フェルミ推定の解法ステップ1 ー 前提確認
多くのフェルミ推定は
「ファミレスチェーンの市場規模を求めよ」
のように、非常に抽象的な形式で出題されることが多いです。
このお題そのままでは、不確定要素が多いため、出題者が求めて欲しい値と、自分が考える値の前提にズレが生まれてしまう可能性があります。
そのため、いきなり立式をする前に、まずは定めたほうが良い不確定要素を仮置きしていきます。
出題者に直接聞いても良いですし、自ら仮置きして、推定結果を出題者に伝える際にまず自分が仮置きした不確定要素について共有する、という方法を取ってもいいでしょう。
お題例として取り上げた
「ファミレスチェーンの市場規模を求めよ」
の場合だと、定めるべき不確定要素は上の図のようになります。
他にも様々な不確定要素はありますが、地域・時期といった不確定要素のスコープを絞ることが、この問題ですと非常に優先度が高いです。この二つについては最低限前提を仮置きしておきましょう。
フェルミ推定の解法ステップ2 ー 立式
前提確認をした次は、いよいよ立式です。
求めたい値のみを推測しようとするとかなり勘に近くなってしまいます。
例えば
「ファミレスチェーンの市場規模は大きそうだから大体4,000億円くらいかな〜」
程度の解像度になってしまいます。より解像度を上げ、精緻に推定するためには、求めたい値を複数のファクターに分解した式を立ててあげることが必要です。
フェルミ推定の立式の概要
この分解された一つ一つのファクターだと、より正確に値を置くことができます。
この立式の際に重要なのが、冒頭でお伝えした、MECEに分解できているかということです。式の要素に抜け漏れやダブりなどがあると、値を正確に推測することが出来ません。
抽象的なままだと分かりづらいと思うので、ファミレスチェーンの市場規模の場合に当てはめてみると以下のようになります。
まずはファミレスチェーンの市場規模を大きく客数と客単価という要素に分解します。
しかし、それだけではまだ推測しやすい要素になっていません。特に客数は推測するのが難しいと思います。ですからより細かい要素に分解していきます。
2段階分解した式だと、一つ一つの要素の値はかなり推測しやすくなったと思います。例えば人口だと1.2億人というファクトで値を置けますし、外食の割合も1週間の食事のうち、何回くらい外食するかを考えれば、仮説と論理に基づいた、ある程度妥当そうな数値を置くことができます。
慣れてくるといきなり二段階目の「人口×年間食事回数×…」を立てられるようになります!
筋の良いフェルミ推定の立式とは?
また、この式分解において重要なのが、立式の筋の良さです。MECE的に正しい式分解は複数個存在します。その中でも最も筋が良い立式を選択し、制限時間内により精緻に数値を推定することが求められます。
例えば、ファミレスチェーンの市場規模だと上のような、供給側からの切り口での式分解もMECE的には正しいです。
しかし、全国のファミレスチェーンの店舗数、という要素が、肌感覚を持っていない人が多く、また何かしらのロジックを用いて考えることも時間がかかりそうです。例えば1店舗が何平方キロメートルごとに存在するかを考えて、日本の面積全体をその値で割ってあげる、という方法も考えられますが、時間がかかります。
一方、最初に書いた、需要側の切り口での式分解だと、どの要素もある程度事実として値を知っているもしくは簡単なロジックで値を推測できます。そのため、今回はこの需要側からの切り口で行う立式が筋が良いということになります。
上でも紹介したように、一般的にこの「ファミレスチェーンの市場規模」はマクロの売り上げ推定系の問題に分類されますが、このマクロの売り上げ推定系は一般に需要側の切り口から立式を行うと求めやすいです。
ぜひその他の問題例でも考えてみましょう!
フェルミ推定の解法ステップ3 ー セグメンテーション
立式が完了したら、次はそれぞれの要素の値を代入していきたいのですが、それをより精緻に行うための手段がセグメンテーションです。
セグメンテーションの概要
まずは先ほどの立式と同様に、セグメンテーションについて抽象的に説明します。
セグメンテーションは、顧客を複数のセグメントに分解し、それぞれのセグメントごとに式の要素の値を推測することで、より解像度が高く値を推測できるため、最終的な推定値の精度を高めることができます。
具体的にファミレスチェーン市場規模の場合は、例えばセグメンテーションを顧客の属性によって切ることができます。属性で切ると、MECEになりますし、なおかつ式分解した各要素の値も違いが出て、より精緻に値を推測できそうです。
筋が良いセグメンテーションとは?
また、立式でもMECE的には正しい式が複数存在し、その中でも筋の良し悪しがあったように、セグメンテーションにおいても、筋の良し悪しが存在します。
ファミリーレストランの市場規模の場合で具体的に考えてみましょう。
先ほどは属性でセグメンテーションしてみましたが、例えば生物学的な性別もMECEです。
ただ性別でセグメントを切った際に、式の各要素の中で、値が大きく変わるようなものが少ないですね。
また、他だと47都道府県もMECEなセグメンテーションです。しかしこの場合はセグメント数が多すぎます。フェルミ推定は時間が限られているため、あまり向いていません。
シェアが高いA社、B社…といった会社別のセグメンテーションも考えられます。しかしこれは各セグメントごとの値に差があまり出なさそうです。
そのため、様々なMECEなセグメンテーションの中でどれを選択するかにあたっては
・時間内に求められる程度のセグメント数か?
・各セグメントの間で数値の差がでるか?
を軸に筋の良し悪しを見分けることができます。
フェルミ推定の解法ステップ4 ー 数値代入
いよいよ式分解してセグメンテーションしたあとは数値代入になります。
上の図は数値ブロックのイメージ図となり、ここに数字を代入していくのですが、単に埋めればいいというわけではありません。この数値代入にも良し悪しがあります。
筋の良い数値代入のポイントは、以下の通りです。
- 客観的に分かる事実に基づいている
- セグメントごとに値の差が出ている
- 適度な有効数字、数値の大きさで代入できている
あくまでフェルミ推定は他人にアウトプットを伝える前提ですので、値の代入も相手の理解を得られるものである必要があります。そのためには自分の主観に基づいた数値よりも、客観的で共通認識の取れる事実に基づいている方が伝わりやすいです。
また、セグメントごとに差が出ていることも重要です。セグメンテーションは、異なるセグメントごとに解像度が高められ、そのセグメントにユニークな数値を出すためのものです。ですからセグメントごとに値の差がないということは、セグメンテーションの切り口の筋が良くないことになるので、セグメンテーションから見直す必要があります。
最後に有効数字の桁や数値の大きさです。フェルミ推定はあくまで桁を合わせる程度の精度を目指しているため、3.25%のような計算しにくい値を置くのは得策ではありません。多くのケース面接では電卓などの計算機が持ち込みできないので、紙とペンのみで答えを出す必要があります。計算しやすい有効数字、値の置き方をしましょう。
例題の場合は、例えば上のように代入できます。
それぞれのセグメントの数値を、ある程度共通認識の取れる事実と自身の仮説をもとに代入してあります。結果としての有効数字も一桁、セグメントごとの値の差も出ており良い数値代入の例と言えます。
フェルミ推定の解法ステップ5 ー 計算
最後に、代入した数値の計算です。
時間が限られており、なおかつ最低限の正確性が求められるため、計算の段階でも工夫を凝らす必要があります。このパートではそのうち特に基本的で効果の高い二つを紹介します。
工夫1:複雑な値は計算しやすい値に変換する
これは、数値代入の際にも触れましたが、フェルミ推定の最終目標が桁を合わせる程度なので、複雑な値は計算しやすいものに変換してしまって大丈夫です。
例えば2.45を2.5に、1.1を1.0に変換して桁は変わることはありません。
どの程度の幅なら値を計算しやすいものに変換して良いかは要素の数にもよりますが、経験則的に10%程度であれば、桁を変わるまでの変化はないです。
工夫2:10の累乗の計算を用いる
次に、10の累乗の計算を用いるという工夫です。こうすることにより、市場規模推定などの桁が大きくなりがちなフェルミ推定でも、素早く計算できます。
以下の表くらいの桁までは頭の中に入れて、いつでもすぐに変換できるようにしましょう。
例題で、高齢者セグメントのみの計算において、以上の二つの工夫を施すと以下のようになります。
また、時間に余裕があれば概算値を検算してみると良いです。
この検算の際のポイントは、複数の視点から妥当性を検証する、ということです。
例えば、例題のファミレスチェーン市場規模の場合で、最終的な計算結果が2兆円になったとすると、
「人口1.2億人だから一人当たり年間2万円程度か。少し大きいかも。」
「他の食事産業が数千億円程度の市場規模だから少し大きいかも。」
というような検算ができます。複数の視点から妥当性を検証することで、より検証の精度が高められます。推定値にズレがありそうな場合は、自分のおいた数値を見直してみて、より精緻に求められるロジックはないか考えてみましょう。
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