コンサルティングファームの面接で出題されるケース面接。
本記事ではケース問題の中でも基礎的な問題を厳選して取り扱います。
Reverseでメンターを行なっているMBB内定者・現役社員の解説付きでご紹介しています。
以前は会員様限定で取り扱っていた内容も含まれており、有料級のコンテンツとなっています。
また、以下の記事ではケース面接の解法を解説しています。初心者の方はまずこちらの記事を読んでから本記事の問題にチャレンジしてみましょう!
また本記事で紹介する解説はあくまで一例です。ケース問題に正解はありません。なので受験勉強のように答えを求めてそれを覚える、という学習方法は適しません。基本的には自分の頭で考えるということが非常に重要となります。
本記事では一定の思考の型を解説しているので、書いてあることをもとに自分なりの仮説や論理を付け加えて、自分なりの回答を作るように心がけましょう。
それでは早速始めていきましょう!
目次
ケース面接のお題の種類
ケース面接は主に以下の3種類に分けられます。ビジネスケースは細分化すると、全社戦略(全店舗の売上向上を考える)『マクロ系』と呼ばれるものと、1店舗の売上向上を考える『ミクロ系』と呼ばれるものに分類されます。
今回は特に重要になるビジネスケースを3問、パブリックケースを1問解説していきます!
ビジネスケースについてはマクロ系について成長産業と衰退産業からそれぞれ1問、ミクロ系から1問出題しています。パブリックケースについては『〜すべきか?』という形式の『是非系』と呼ばれる種類から出題しています。
【ケース面接厳選問題集】問題1:ビジネスケース(マクロ系①)
冒頭でも紹介したように、マクロ系とはある1社の全店舗の売上向上などを考える問題です。
お題は『シェア1位のスマートウォッチの売上向上』です。
5分程度時間を取って、実際に頭と手を使って考えてみましょう。
それでは、解説していきます!
前提確認
いきなり現状分析や課題特定に入る前に前提確認をしておきましょう。
シェアに関してはお題で1位と指定されているので、期間やクライアント情報に関して前提を確認しておきます。特に今回はお題が工業製品なので、クライアントは他の電子機器も製造している場合があります。
そこで、『他にどんな製品を製造しているのか?』を洗い出しておくことで、製造技術や販売チャネルといった自社のアセットを活かした施策やクロスセルも視野に入れていきます。
今回は以下のように前提を定めました。
- お題にある通り、シェアは1位(特に2位とのシェアの差は大きく離れているとする)
- 期間は3~5年
- クライアントはスマートウォッチの他にPCとタブレット、スマートフォンを販売しており、他の電子機器との連携を強みとしている
- 製造から販売まで一貫して行っており、販売チャネルとしては以下の3つ
- 自社店舗
- 家電量販店
- EC
現状分析
次に現状分析を行っていきます。
自社については前提確認である程度触れたので、今回は外部環境として市場と競合について現状を分析していきます。
市場
お題の特徴は成長産業であることですね。
スマートウォッチは2010年代半ばから市場に現れ、そこから右肩上がりに市場規模を伸ばしてきていることは容易に想像できます。
今後の推移を予測してみても、まだまだ普及率は低そうな点から、ポテンシャルは飽和しておらず、当面は右肩上がりに伸びていきそうです。
ここの伸びている市場、すなわち『新しくスマートウォッチを買う人たち』をどう取り込んでいくかが課題になりそうです。
また、現状のユーザーとしてはデジタルへの親和性やスマートウォッチの機能性から、若年社会人が中心である可能性が高いです。
競合
直接競合としてはもちろん他のメーカーが製造しているシェア2位以下のスマートウォッチが挙げられますね。彼らも自社同様に他の電子機器を製造している可能性が高いでしょう。
一方、間接競合はどこになるでしょうか?
もちろん同価格帯(数万円)の高級腕時計が競合になる場合もあるかもしれませんが、そのシーンは少なそうです。ここではその理由について軽く触れておきます。
そもそも間接競合とはサービス(プロダクト)の形が違っていても、顧客に対する提供価値は同じであるような競合を指します。ここでポイントになるのは『提供価値が同じ』という点です。
腕時計の提供価値とは何でしょうか?
腕時計には『機能的価値』と『情緒的価値』の2種類があります。
まず『機能的価値』とは主に安価な腕時計が提供している価値で、『時間を確認することができる』という意味合いが強いです。また、スマートウォッチならば『スマホとの連携』『ヘルスケアのためのデータ取得』などもあります。
一方で『情緒的価値』は高級腕時計が主に提供している価値で、持っていること自体がステータスになるというような付加価値の意味が大きいです。
スマートウォッチと同価格帯である数万円の腕時計が提供している価値は後者に近いですから、機能的価値を提供しているスマートウォッチとは競合になり得ないということですね。
以上の議論を踏まえると、スマートウォッチにはあまり間接競合はおらず、あるとすれば近年現れてきたスマートリングぐらいでしょうか。ただ、まだまだ市場に浸透しておらず、現段階では考慮しなくても良さそうです。
以上が外部環境の分析でした。
課題特定
先ほどの外部環境の分析を踏まえて課題を特定していきます。
まずは売上を下のように分解しました。
ここで、
- 市場の分析で触れた通り、スマートウォッチは成長市場である
- まだポテンシャルは飽和しておらず、今後も市場規模の拡大余地はある
- 自社は圧倒的トップシェアのマーケットリーダーであることから市場規模の拡大が鍵になってくる
という仮説から『スマートウォッチ保有率』にアプローチしていきます。
『スマートウォッチを買わない人はなぜ買わないのか?』を考えるために、顧客の購買フローをファネルごとに分解して考えていきます。
購買フローを『認知』『魅力』『ハードル』で分解しました。(正確には魅力とハードルはフローではなく天秤関係にあります。)
ここで、
- 商材の認知は十分に取れていること
- 確かに高単価ではあるが、ターゲットとしているのが若年社会人でそれなりの所得はあること
から、商材の魅力にネックがありそうです。
商材の魅力について考えてみると、
- 競合分析で見た通り間接競合はほとんどおらず、『腕時計かスマートウォッチか』ではなくそもそも『スマートウォッチを買うか買わないか』で迷っている消費者が多いこと
- 『あったら便利だが、なくても困らない』という嗜好品のような立ち位置であること
- 単価が高いため十分に吟味してから購入したいが、店頭で触るだけでなく実際に1週間~1ヶ月利用してみないと利便性が伝わりづらいガジェットであること
という仮説から、商材自体に魅力がないというよりは、利用したことがないために商材の魅力が伝わっていない可能性が高そうです。
施策立案ではこの課題を解決する方法について考えていきます。
施策立案
課題特定では『利用したことがないために使い方が分からない』というボトルネックを特定しました。このネックに対して施策を構造的に考えたのが下の図です。
ここで
- クライアントが他の自社製品との連携を強みにしていること
- 課題特定でも触れた通り、そもそも『買うか買わないか』で迷う消費者が多いことから、顧客とのタッチポイントをフックとして利用する必要があること
という2つの仮説から施策として『他製品を購入するタイミングでのセット販売(=クロスセル)』という結論に至りました。
【ケース面接厳選問題集】問題2:ビジネスケース(マクロ系②)
続いてのお題もマクロ系です。
お題は『スーツメーカーの売上向上』です。
先ほどのお題とは対照的な衰退産業ですが、皆さんならどう考えますか?
こちらも5分程度時間を取って考えてみましょう。
では、解説を始めていきます。
前提確認
前問と異なり、お題の中でシェアが指定されていないのでシェアを含めてクライアント企業の前提について定義および絞り込みを行っていきます。
以下4つの前提を確認しておけば十分でしょう。
- シェアは1位
- クライアントは多様な事業を行っているコングロマリット企業だが、今回の売上向上は基幹事業であるビジネスウェア事業に絞って考える
- 販売価格帯は2万~5万円程度の低価格帯で、学生や若年社会人といったマス層をターゲットにしている
- 製造から販売まで一気通貫して行っている
- 全国に販売チャネルを持っている
現状分析
今回も市場と競合について分析していきます。
自社について分析しても良いのですが、後に市場の分析で述べるように商材のコモディティ化が進んでいる業界ということもあり、プレイヤー間における差分が少なく、前提事項で定めた要素で十分と考えたため省略しました。
市場
上でも触れた通り、お題の特徴は衰退産業であることです。
ではなぜスーツ市場は衰退してしまっているのでしょう?ここをマクロトレンドから落とし込んで考えてみると、以下の2つの理由が考えられるでしょう。
・(短期的トレンド)コロナによる在宅勤務・テレワークによる着用頻度減少
・(長期的トレンド)国内人口の減少・オフィスカジュアルの台頭
前者のトレンドはコロナの収束で多少改善しそうですが、後者に関しては人々の価値観・生活様式の変化ですから、今後も続いていきそうですし、ここを1企業でどうにか覆すのは難しそうです
また、業界の各プレイヤーを見てみるとトップシェアを占めているのは低価格帯の大手スーツメーカーで、ブランド力に差がないことや、スーツという製品の特性上、品質やデザインによる差別化が難しいことからコモディティ化が進んでいる可能性が高いです。
各社が頻繁にセールを行っていたり割引を行っていることを見ても、コモディティ化による価格競争が起こっているという仮説は蓋然性が高いと言えますね。
以上を踏まえると、いかに規模の経済を働かせられるかといったコストリーダーシップ戦略や立地戦略がスーツ事業のKSFになっていそうです。
※KSF:Key Success Factorの略。事業を成功させる上で必要になる条件。
競合
まずは直接競合です。こちらは市場でも触れた通り他の同価格帯スーツ販売会社で、シェア2位や3位企業との差はそこまで大きくなさそうです。
間接競合になるのが市場でも触れたオフィスカジュアルのウェアを販売している企業です。
ここでオフィスカジュアル市場を価格帯ごとに細分化して見てみると、低価格帯(3000円~1万円)・中価格帯(1万円~5万円)・高価格帯(5万円~)ともに競合がひしめき合っていそうです。
特に低価格帯に関しては圧倒的な規模の経済によって高品質・低価格の商品を大量生産・大量販売しているグローバル企業がトップシェアを占めています。
課題特定
今回の問題では売上減少の要因が市場の縮小であることは明らかですから、ここまでような『売上減少の真因を特定する』という進め方ではなく、『どの市場で戦うべきか(where to play)』を定めた後に『その市場でどう戦うか(how to win)』を考えていきます。
まずは狙うべき市場を特定するために、ビジネスウェア市場を以下のように構造化しました。
ポイントはtoC市場を最上段のレイヤーとして考えていないことです。
『ビジネスウェア』は何もスーツやオフィスカジュアルだけではありません。『オフィシャルな場で着用するもの』と捉えればtoBである企業や学校の制服もビジネスウェアに入りますし、今回のクライアントが十分に狙える市場です。
ケース面接では思考の広さ(視野の広さ)をアピールするためにも、常に『自分の議論はきちんと全体の構造化の最上段から考えられているか?』を意識しておきましょう。
※正確に構造化すれば最上段は海外市場 / 国内市場 となりますが、今回は国内市場に限って話を進めていきます。
また、構造化を『toBビジネスウェア』『toCビジネスウェア』のレイヤーで留めず、もう一段下まで細分化した理由としては
- 現状分析から、toCビジネスウェア市場のトレンドとしてスーツからオフィスカジュアルへと顧客が流れており、クリティカルな切り口であること
- toB / toCというレイヤーの段階では抽象度が高く、この時点でどちらに注力すべきかという絞り込むのが難しいこと
が挙げられます。
このように『どの段階まで幅出ししてから絞り込むか?』はお題に合わせて臨機応変に考えましょう。
ではここから各市場について分析していきます。
市場の絞り込み方法として『市場は魅力的か?』『競合に勝てるか?』を2軸に考えていきます。
- スーツ市場(既存市場)
現在クライアントが軸足を置いている市場です。
市場全体で見ると今後も縮小が続きそうですし、市場の魅力としてはそこまで大きくなさそうです。
この市場で拡大を狙うなら
・営業マン、公務員などスーツの市場が今後も残りそうなセグメント・業界
・女性用スーツのようなまだリーチできていない市場
を狙うなどでしょうか。
もちろん軸足を据えている市場ですから今後もリソースを投下していく必要はありますが、現状はトップシェアであり、十分にコストリーダーシップも取れていて競合優位性も問題ないことから、優先度としては高くなさそうです。 - オフィスカジュアル市場
次に、スーツ市場が大きく衰退している要因であるオフィスカジュアルについてです。
現状分析でも触れた通り、市場が成長していることから魅力的という点には疑いがないでしょう。
一方で考える必要があるのが『オフィスカジュアル市場に自社が参入したとして、本当に競合に勝てるのか?』という点です。
参入時にどこが競合になるのかを考えるために、まずは『参入するならどのセグメントか?』を考えてみましょう。ここで、競合分析で価格帯によって細分化した議論が活きてきます。
今回のクライアントはスーツ市場においては2万~5万円の学生・若年社会人向けのプロダクトを取り扱っていますから、オフィスカジュアルにおいても低価格帯に参入するというのが自然な考えです。
もちろん中・高価格帯へ参入することも可能ですが、この価格帯で消費者が重視するのが『ブランド』です。服の機能的な価値よりも情緒的な価値を重視します。
そこに対して、スーツ市場で低価格帯にポジショニングを取っている自社が参入していっても、消費者の中にある『低価格帯の庶民的ブランド』というイメージを払拭して既存のプレイヤーに買っていくのは厳しそうです。
では、唯一戦えそうな低価格帯で勝てるのかどうかを検討してみましょう。ここで、消費者がどのような選択基準でオフィスカジュアルの服を選ぶのか、すなわちKBF(Key Buying Factor)を考えてみると、主に以下の5つが挙げられそうです。
・デザイン
・品質
・価格
・チャネル(買いやすさ)
・ブランド
特に低価格帯で重視されるのが品質と価格です。つまり『安くて良いもの』を求める傾向が強いと考えられます。
一方、競合分析で触れた通り、低価格帯の既存プレイヤーは高品質・低価格の商品を大量生産・大量販売して規模の経済を働かせているグローバル企業ですから、国内の一企業が同じ土俵で戦うのは厳しそうです。
以上を踏まえるとオフィスカジュアル市場は魅力的である一方、クライアントが参入しても勝ち筋は薄そうです。 - 法人の制服
toBのうち法人の制服市場です。
ここでいう法人の制服とは、レストランやコンビニといったサービス業の制服を指します。
オフィスカジュアルに台頭されているスーツとは異なり、小売や飲食を始めとしたサービス業で実際にtoCの顧客と対面する業界では制服の需要は残りそうですから、市場としては魅力的であると言えます。
一方で競合優位性はどうでしょうか。
既に法人向けに制服を販売している企業はありそうですが、
・自社は全国に生産拠点や販売チャネルを持っている
・大量生産できればコストリーダーシップは取れそう
・既に自社の知名度は高いため法人営業のハードルも高くなさそう
という仮説から、既存のプレイヤーに品質・価格の面で勝つことは一定できそうです。 - 学生の制服
こちらはtoBのうち学生服の市場です。
市場については少子化の影響や制服撤廃のようなトレンドによって緩やかに減少していきそうです。
一方で競合優位性については法人の制服同様にアセットは活かせそうですが、ここで法人の制服と異なってくるのが、学生制服では『学校ごとの形状や柄の個別対応』が必要になってくる点です。
KSFとして『コストリーダーシップが取れるか』が重要になってくる中で、同じものを大量生産できないというのは自社にとってマイナスとなりそうです。
企業の制服でももちろん企業ごとの個別対応は必要ですが、一顧客あたりの生産着数が学校と企業では大きく違いますね。
以上の議論をまとめるとこのようになります。
施策立案
ここからは法人向け制服市場でどう勝つか(How to win)について考えていきます。施策の具体化、解像度を上げるとも言います。
初期アウトプットで詰めておきたいのが『具体的な顧客像(どういった企業にアプローチするか?)』です。法人といっても様々ですから、その中でもどのような企業であれば自社の強みが活かせるのかを考えます。
ここまで出てきた自社の強みを踏まえて、ここでは以下のような評価軸を考えました。
- 事業規模は十分に大きいか
- 必要数は多いか
大量に同じものを生産することでコストリーダーシップを取りたいので一企業あたりの生産着数が多い企業であることがマストになります - 広い地域に展開しているか
自社の強みである『全国に生産拠点や販売チャネルを持っている』という点を活かすのであれば顧客企業も全国展開していると理想的です
- 必要数は多いか
- それなりに品質を重視する企業か
『スーツのようなしっかりした生地のビジネスウェアを大量製造できる』というのが自社の強みの一つですから、それなりに品質を重視する企業が適していそうです。
これらの評価軸を踏まえると大手ホテル業界や航空業界などが顧客像として考えられます。
初期アウトプットとしてはここまで出せれば十分でしょう。
市場の決定や施策の方向性に大きく問題がなければ、ここからのディスカッションで
- 規模の経済を働かせるための具体的な施策はあるか?
- どう顧客を既存の発注先からスイッチングさせるか?
など、施策の具体性について詰めていくことになります。
上記2点は重要なポイントなので是非みなさん考えてみてください。
【ケース面接厳選問題集】問題3:ビジネスケース(ミクロ系)
続いての問題はミクロ系のビジネスケースです。ミクロ系とは1店舗の売上向上を考えるような問題系統です。
お題は『新宿にある大型書店1店舗の売上向上』です。
書店事業にはどのようなトレンドがあり、その中で自社がどのような価値提供ができるのかを考えてみましょう。
では解説していきます。
前提確認
ミクロ系ではマクロ系ほどお題特有の前提確認が出てくることはありません。
以下の点についてだけ確認しておきます。
- 全国展開している大手チェーンの新宿店を考える
- 新宿ということもあり規模は大きめ。ビルの1階から5階くらいまで持っていて、書籍のジャンルごとにフロアが分かれているイメージ。
- クライアントは新宿店の店長だが、超大型店の店長ということもありそれなりに裁量権は大きい
現状分析
まずは案件の依頼背景について考えてみます。
そもそも書籍販売事業における大きなトレンドはなんでしょうか。
考えられるものは
- 電子書籍化
- Amazonを始めとしたECプラットフォームの出現
です。
後者は書籍に関係なく小売全般で言えるマクロトレンドですが、特に書籍は『どこで買っても中身が同じ(=ロットの当たり外れがない)』という特性を持った商材のため、このマクロトレンドの影響を顕著に受けていると考えられます。
つまり、これら2つのトレンドによって書店にくる客が減少し、売上が減少しているというのが依頼の背景にありそうです。
では、『どういった顧客』が『どういう理由』で、ECや電子書籍に流れているのでしょうか?
この問いが実はこのお題のポイントです。
そもそも私たち消費者が書店にいくシーンは大きく分けると以下の2つに分けられます。
①購入したい書籍が明確に決まっている
②購入する書籍が決まっていない(ザッピング)
ECや電子書籍に流れているのは明らかに①ですよね。
では彼らはどういった理由で流れているのでしょうか?
考えられる理由は『価格が安く』『品揃えが豊富』だからです。
ECの強みは実店舗を持たないが故の価格の安さ、そして揃わない書籍はないというレベルの品揃えです。電子書籍に関しても、原価の印刷代や紙代がかからないため販売価格が安く、在庫という概念も存在しません。
これら2つが原因でオンラインに流れてしまっているというわけです。
ではオンラインに対抗できるオフラインの強みは何でしょうか?
それは②の人たちがオフラインの書店にくる理由でもありますが、『実際に中身を見ることができる』という点です。これは『迷っている複数の書籍を十分に比較検討できる』というニーズだけでなく、『特に読みたい書籍があるわけではないがザッピングすることそのものを楽しみたい』というニーズにも刺さっています。
この強みを活かして戦っていくことが書店の勝ち筋になりそうです。
ここまでの議論を踏まえて課題特定に入っていきます。
課題特定
まずは売上を以下のように分解しました。
現状分析で見た通り、
- 既に買いたい書籍が決まっている人はほとんどオンラインに流れてしまっており、オフラインの特性上ここに打ち勝っていくのは厳しそう
- ザッピングであれば『自由に中身を立ち読みできる』というオフラインの自社ならではの強みを活かせそう
という理由からこのセグメントに絞って考えていきます。
次にザッピング層をより細分化しました。
現状分析で考えた通り、ザッピング層には
- 購入する候補の書籍が複数あるが、中身を見て比較検討したい層
- 購入する候補も決まっておらず、ザッピングそのものが楽しみになっている層
の2つのセグメントがあります。
前者は既に購入すること自体は決まっているため、売上向上のポテンシャルとして大きいのは後者で、いかにこのセグメントからの売上を上げていくかが鍵になりそうです。
次にこのセグメントの客数を以下のように構造化しました。
- ザッピング層に関しては来店した時点で競合はあまり存在しない
- 購入するかどうかは本の魅力に依存している
という2つの仮説からアプローチすべきは『来店回数』『来店時間』の2つの因数になりそうです。
施策立案ではこれら2つの因数について構造的に施策を考えていきます。
施策立案
施策の方向性を以下のように構造化しました。
ここで、
- クライアントは大手チェーンの書店であり、立地もそれなりに良いことから商圏におけるザッピングニーズのシェアは取れていそう。
- 大型書店ということからもザッピングで本を探す時間もこれ以上は伸び代がなさそう。
という2点から商圏内におけるザッピングニーズでシェアを取りに行くことや、本を探す時間を伸ばすのは厳しそうです。
一方で、書籍以外の事業展開によって新たな来店目的を創出し、『本を読む』以外の幅広いニーズに対応していくことで、別目的での来店を『きっかけ』として顧客に書籍を購入してもらうということは十分に考えられそうです。
また、現状の書店では立ち読みに限定しており、ゆっくり座って読むことができないことが来店時間の短い原因であると考えると、リラックスして本を読むことができるスペースの創出も方向性として考えられそうです。
以上の議論を踏まえると、例えば『カフェスペースの併設』が施策として挙げられますね。
【ケース面接厳選問題集】問題4:パブリック系
最後はパブリック系の問題です。パブリック系は『公共系』とも呼ばれ、政府やNPOのような非営利団体をクライアントとして想定する問題系統です。
ここで取り上げるお題は『電子投票を推進すべきか?』です。
電子投票とは選挙における投票を電子化したもので、一部の海外の国では既に実施されている国も存在します。
こちらも時間を取って考えてみてください。
では解説していきます。
前提確認
考える対象の国を日本とします。
現状分析
ビジネスケースでは外部環境や自社のポジショニング、強みなどについて分析しましたが、パブリック系ではそのお題の背景やクライアントの目的について考えることが多いです。
まずお題の背景についてですが、やはり考えられるのは国民、特に若者の投票率の低下であると考えられます。
クライアントの目的としては若者を中心とした国民の投票率を上げるために電子投票を導入しようとしていると考えて良いでしょう。
また、サブの目的として『選挙コストの削減』も考えられそうです。現状の選挙は投票所のオペレーションや開票に大きな人件費がかかってしまっていますが、電子投票にすればこの人件費が削減できるかもしれません。
このように利益追求だけを目的とするビジネスケースと異なり、パブリックケースでは目的が複数存在する場合があることを意識しておきましょう。
論点分解
是非系の問題に対しては様々なアプローチ方法があります。
例えば
- その施策が解決しようとしている課題を特定し、その課題解決に対して提案されている施策が最適なのかどうか(目的に適っているのかどうか)を検討する方法
- お題を大論点として、中論点、小論点と分解していき、1つ1つの論点に対して答えを出す方法
などがあります。
今回は2つ目の方法で議論を進めていきます。
まず『電子投票を推進すべきか?』という論点(問い)を分解します。
ここでは大きく
- 電子投票を推進する必要があるか?
- 電子投票は実現可能か?
の2つに分解しました。
特に後者の『実行可能性(Feasibility)』の論点は見落としがちなので注意しましょう。
今回重要になるのはもちろん前者の『必要性』の論点なので、今回はこちらを深掘りして考えていき、実行可能性については最後に補足的に触れておきます。
以下で『電子投票を推進する必要があるか?』という論点をさらに分解しました。
ここでは
- 投票率は上がるか?
- 選挙コストは削減できるか?
という2つの論点に分解しました。
ここで現状分析で確認した『依頼の背景』『クライアントの目的』が活きてきます。
メインの目的は投票率を上げることですから、今回はこちらに絞って考えていきます。
現状分析で触れた通り、今回注力したいのは若者層なので
・若者の投票率は上がるか?
・中・高齢者の投票率は下がらないか?
という2つの論点に答えが出れば投票率が上がるかどうかがわかりそうです。
若者の投票率は上がるか?
ここがメインの論点です。これに対してYes / Noの答えを出すために、
①若者が選挙に行かない理由を構造的に考える
②電子投票が課題を解決しているかを考える
という順序で考えていきます。
①若者が選挙に行かない理由を構造的に考える
若者が選挙に行かない理由は『政治に関して知識、興味関心がない』といった心理的要因と、『投票はしたいが時間がない、投票所が遠い』といった物理的要因が考えられます。
ここで、日本では期日前投票が可能であることから時間がないというのは考えづらいですし、国土面積が小さく、1選挙区の面積も小さいことから投票所までの距離も余程遠くなるとは考えづらいです。
一方で若者は政治に対して興味関心が薄く、そもそも選挙に行くことに意味を感じていないという心理的な要因で投票率が下がっていると考える方が妥当性が高そうです。
②電子投票が課題を解決しているかを考える
では、電子投票が解決しているのはどの課題なのでしょうか?
電子投票にすることで国民は自宅や外出先からインターネット上で投票ができます。これが解決しているのは物理的要因ですね。
以上の議論をまとめると、若者の投票率が低い原因は心理的要因であるのに対し、電子投票が解決しようとしているのは物理的要因ですから、『若者の投票率は上がるか?』という問いに対する答えはNoになりそうです。
中・高齢者の投票率は下がらないか?
こちらはそれほど重要な論点ではありませんが、デジタルに親和性のない高齢者に関しては電子投票によって投票率が下がるかもしれないという考え方はありそうです。
ただし、これに関しては全面的に電子投票に移行するのではなく、紙と電子投票を併用していくことで解消できる問題ですから、中高齢者層の投票率低下は防ぐことができそうです。
最後に最上段で考えた『電子投票は実現可能か?』という実行可能性の論点について触れておきます。
この論点に関してはディスカッションで聞かれる場合もありますし、初期アウトプットの段階では時間があれば触れる程度で良いでしょう。
この論点も、より具体的に分解すると以下のように分解されます。
ポイントは『制度的に可能か』で、選挙の4大原則(普通選挙・平等選挙・秘密選挙・直接選挙)が守られるかどうかも検討する必要がありそうです
以上の議論を踏まえると電子投票は推進すべきではないという結論になります。
終わりに
ケース面接厳選問題集はいかがでしたでしょうか?
基礎的でありながらも、学びの多い問題を中心にピックアップしました。
また、マクロ系/ミクロ系、成長産業/衰退産業のようにバランスよく取り上げたので、この4問をしっかり学ぶことでかなり力がつくかと思います。
また自身の考え方をデリバリーする際に用いるフレームワークに関しては以下の記事にまとめているので是非参考にしてみて下さい。
一方でケース面接ではこれらのジャンルでもさらに様々な業界の問題が出題されます。また、これら以外のジャンルの問題も存在します。
それらの問題を適切なFBを受け、自身の仮説の筋や論点設計を修正していく事で実力が向上して行きます。
そこでReverseでは、マンツーマンで行うケース対策サービスをご提供しております。
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