外資系戦略コンサルや外資系投資銀行を中心として、近年では総合商社といった日系の選考でも出題されるようになったケース面接。本記事では、Reverse会員限定で開講していたケース面接の講座を元に、ケース面接の解法と重要ポイントを分かりやすく解説します。
この記事を読めば、ケース面接の基礎を完全にマスターできます!
まだケース面接についてまだあまり知らない方は先にこちらの記事をご覧ください。
目次
まずは解いてみましょう
さっそくですが『フードデリバリー(※)の売上向上施策』について5分間で考えてみてください!
※ここではフードデリバリーのプラットフォームサービスを指します。
ここからはケース面接の解法について、このお題を用いて解説していきます。一度自分で解いてみることで学びが深くなります。一度読むのをストップして、自分の頭と手を動かして考えてみましょう!
ケース面接の解法プロセス
実際の解法に入る前に、そもそもケース面接がどういった解法プロセスで進んでいくのかについて触れておきます。
ケース面接は以下の4つのプロセスに分けられます。
- 前提確認
- 現状分析
- 課題特定
- 施策立案
前提確認
ポイント
まずはアウトプットを出すにあたって、認識のすり合わせが必要な項目や議論を収束させるために必要な項目を検討していきます。
前提確認は主に『要素の定義』と『検討事項の絞り込み』に分けられます。前者は面接官と認識をすり合わせること、後者は限定的な範囲内で議論をすることで収束させやすくすることが目的です。
『毎回これだけ確認すれば良い』といった特定の項目はないので、何を前提として確認するかはそれぞれのお題に沿って考えましょう。『国内の売上について考えます』や『クライアントはこの企業の社長を想定しています』といった前提確認をする方がよくいますが、前提確認の目的は『面接官との認識の擦り合わせ』ですから、既に共通認識が取れているであろう『当たり前な項目』については言及しすぎなくても良いことに注意しましょう。
例題を用いた解説
『フードデリバリーの売上向上施策』について前提確認をすると以下のようになります。
- 要素の定義
今回はビジネスモデルと売上を定義しました。今回はプラットフォーム型ビジネスが対象なので、売上は『エンドユーザーの支払った金額』とも『プラットフォームに入ってくるマージン(手数料)』とも捉えられます。今回は前者として定義しましたが、どちらが正解というわけではないので、自分が考えやすいように定義しましょう。 - 検討事項の絞り込み
シェア、スコープ(期間)、展開地域をそれぞれ絞り込みました。特にシェアは1位なのか2位以下なのかで課題や取るべき戦略が変わってくるので注意しましょう。
また、前提確認については面接官にお題を出された時点で質問をして擦り合わせるというのも一つの手です。ただし、その際には仮説を持って質問することを意識しましょう。
例えば今回の例であれば、単に『売上はどう定義すれば良いですか?』と聞くのではなく、『売上の定義はエンドユーザーの支払った金額ともプラットフォームに入ってくるマージンとも捉えられると思うのですが、今回は前者に絞って進めて議論してもよろしいでしょうか?』といった風に、なぜ自分がその質問をしているのかという背景や仮説が相手に伝わるように質問しましょう。
『仮説を持って聞く』というのは面接における逆質問でも重要になってくるので、コミュニケーションの中で常に意識しておきましょう。
現状分析
ポイント
前提を確認したら、次は現状について分析しましょう。現状分析ではクライアントを取り巻く外部環境や、その中における自社のポジショニングについて整理することが一般的です。
例えばよく考えられるのが『市場』『競合』『自社』の3つについて分析を行う3C分析です。
ここでは例として3C分析を取り上げましたが、現状分析も前提確認と同様に『これだけ確認すれば良い』といった項目はなく、『何について分析するか?』はお題に合わせてテーラーメイドに考えましょう。
例題を用いた解説
『フードデリバリーの売上向上施策』について現状分析をすると以下のようになります。
- 市場
コロナによるフードデリバリーの普及で、市場は伸びていそうです。
また、市場を細分化すると従来のピザ屋や寿司屋のように自社でデリバリーしている企業と、最近出てきたプラットフォーム型の企業がありますね。 - 競合
直接競合としてはもちろん他のデリバリーサービスが考えられますが、間接競合としてコンビニやスーパーのお惣菜も考えられます。間接競合とはサービスの形が違っていても顧客に対する提供価値は同じであるような競合を指します。『調理済みの商品を手軽に食べられる』という意味ではコンビニやスーパーのお惣菜はフードデリバリーと同じニーズを満たしていますね。 - 自社
近年に急成長しているフードデリバリー市場でトップシェアということで、業界のパイオニア的存在であると考えられます。また、最近の動向としては初回クーポンを大量に発行することで新規顧客を囲い込もうとするような動きがありますね。
現状分析で事業環境やマクロトレンドを整理しておくことで、後々の課題特定や施策立案で仮説を出しやすくなる、構造化からの絞り込みにロジックがつけやすくなるというメリットがあります。
例えば今回の話だと、『フードデリバリー市場は成長している』『自社はトップシェアのマーケットリーダーである』といった分析から『新規顧客の開拓が鍵になりそう』といった仮説が立つというわけですね。構造化からの絞り込みにロジックを付ける上でどう現状分析を活かせるかは次回の記事で解説していきます。
課題特定
ポイント
課題特定のフェーズでは、ここまでの前提確認と現状分析を元にしてクライアントが抱える課題(=真因)を特定していきます。
課題特定では与えられた課題を構造的に分解していくというのが基本的な進め方になってきますが、ここで重要になるのが『構造化の幅出し』と『仮説を踏まえた深掘り』の2つです。
構造化の幅出し
幅出しのポイントは上流の構造化と下流の構造化で異なってきます。
まず上流の構造化では要素をMECE(※)に分解できているかがポイントになります。例えば『売上』を『客数』と『客単価』に分解したり、『市場』と『シェア』に分解したりと、大きな要素を細かい要素に漏れなく分解していきます。きちんと必要な要素を落とさないように注意しましょう。ここは慣れてさえしまえば多くの人ができるようになります。
※MECE = Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive の略で、『漏れなくダブりなく』という意味を表します。
一方で、下流の構造化では課題が具体的なものになってくるため、考えられるもの全てをMECEに洗い出すことが難しくなってきます。そこでポイントになるのは『可能性を考慮した上でMECEに洗い出せるか』という点です。全ての要素を幅広く拾い出すというのは難しいので、考えられる要素のうち、最も可能性が高いものだけをピックアップするというのが下流の構造化では重要になります。
仮説を踏まえた深掘り
先ほどは構造化における幅出しの話をしましたが、こちらは深掘りにおけるポイントになります。
深くにある真因を特定するために、先ほど幅出しした要素から1つの要素に絞って深掘っていきます。ここで絞り込む際にはしっかり仮説を持ち、ロジックをつけて絞り込んでいくことを意識しましょう。ここのロジックを考える上で、現状分析で整理した外部環境が活きていくるわけですね。
例題を用いた解説
ここからは前回まで扱ってきた例題『フードデリバリーの売上向上施策』を用いて解説していきます。『どういう切り口で構造化しているのか?』『どういう仮説で絞り込んでいるのか?』に着目してみましょう!
まずは『売上』を『客数』と『客単価』に分解しました。
ここで
- 現状分析で見た通り、成長産業の市場である
- ユーザーのリピート率が高く(一度使ったサービスを使い続ける傾向にある)、先行優位性の強そうなビジネスである
- どの企業も初回クーポンを配布している傾向があり、近年新規顧客拡大を狙っている
という3つの仮説から『客数』に絞り込んでいきます。
次に客数を6つの要素に分解しました。
コントローラブルな変数の中で、
- 今回のクライアントはフードデリバリー市場のマーケットリーダーなので、市場の拡大が自社の売上向上につながる可能性が高そう
- 現状分析や売上の分解でも触れた通り、新規顧客の獲得が鍵になりそう
という2つの仮説から『プラットフォーム型選択率』に絞り込みました。
次に、絞り込んだ『プラットフォーム型選択率』を顧客の属性で4つにセグメンテーションしました。
ここでは
- 比較的新しいサービスであることから若者や単身世帯が既存顧客の中心となっていそう
- 新規顧客の拡大を図っていくにあたって残っているパイとしては高齢者が大きそう
という2つの仮説から『高齢者』に絞り込みました。
ここからは『フードデリバリーのプラットフォームを使ったことがない高齢者はなぜ使っていないのか?』を考えていくために、『サービス認知』から『商品受取』までの購買フローに分解して考えていきます。
ここから考えられるボトルネックとして
- そもそもアプリ内に欲しい商品(食べたいもの)がないのではないか?
- アプリを使って店を探したり、住所や決済情報の入力といった利用方法が分からないのではないか?
という2つの仮説が立ちました。ここで、一般的に高齢者はデジタルサービスに対する親和性が低いということを踏まえると、後者の仮説の方が蓋然性が高そうです。
以上の議論をまとめると、『クライアントが狙うべきは新規の顧客層だが、その中でも高齢者のセグメントが取れておらず、そのボトルネックとしてアプリの利用方法が分からない可能性が高い』という話になりそうです。
施策立案
ポイント
施策立案では特定した課題に対して施策を構造的に考えていき、課題特定と同様に仮説を持って絞り込んでいきましょう。
課題特定の後にジャストアイデアで施策を出してしまう人がよくいますが、単なるアイデア大会になってしまわないよう、施策に関しても抽象度の高い『施策の方向性』から『具体的な施策』に落として考えていきましょう。
例題を用いた解説
施策立案に関しても例題『フードデリバリーの売上向上施策』を用いて解説していきます。
先ほど辿り着いた『高齢者にとってアプリの利用方法が分からない』という課題に対しての施策を構造化すると以下のようになります。
- 一般的な高齢者はデジタルとの親和性が低いことを考えると、デジタルのマニュアルやUI改善によって自己解決させるよりも、他者の助けを用いてリテラシーを向上させるのが良さそう
- 大手CtoCプラットフォームアプリが近年携帯ショップで高齢者向けの講座を開いており、今回のお題と背景の課題が似ているためアナロジーが利かせられそう
という2つの理由から施策として『携帯ショップなどをタッチポイントとした高齢者むけの使い方講座を提供する』という施策に至りました。
最後に
本記事では例題を用いてケース面接の解法ステップやポイントの解説を行いました。
以下の記事ではケース面接で出題される問題を4種類に分類し、それぞれについて例題を用いて解説しています。
【MBB内定者の解説付き】戦略コンサルの面接で出題されるケース面接の厳選問題集 〜基礎編〜
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